多摩エリアの住みやすさを紹介!
暮らしの情報コラム
八王子市に転入をお考えの世帯にとって、主な関心事は住宅の外観や間取り、立地、生活環境、子育て事情、各種アクセスなどでしょう。関心の重きを市の財政に置いて転入の可否を検討する世帯は、極めて少数派と考えられます。しかしながら市の財政状況は、行政サービスの種類や水準など、市民の住み心地に大きく関与します。健康保険料の額にも多大な影響を与えます。ここでは八王子市の財政事情について詳しく見ていきましょう。
八王子市の財政は上向き傾向
八王子市では「平成30年度予算編成方針」の中で、次のようにコメントしています。
「本市の平成29年度の財政は、当初予算編成後に生じた新たな需要が見込まれる一方、市税収入及び税外収入が当初予算額を確保できない大変厳しい状況となっている。この現状を踏まえた平成30年度の財政見通しは、(中略)市税収入の水準を引き続き低く見込まざるを得ない状況である。」[注1]
平成29年度の市税収入等が厳しいため、平成30年度も苦戦を強いられる、という趣旨です。
日銀の円安政策が功を奏して日本全体の企業収益は上がり、株価は5年前に比べると2倍に上昇しています。しかしながら市税を支払うべき庶民の生活水準は、ほとんど上昇していない現状がうかがえます。
この状況は、全国の多くの自治体で同様と考えて良いでしょう。
それでも八王子の財政は上向きに推移している
平成30年の八王子の予算規模は3985億円。平成29年度のそれは4079億円、平成28年度は4098億円です。税収が要をなす市の予算において、平成28年度から平成30年度にかけて、徐々に規模が縮小していることが分かります。
その一方で、市債の残高(市の借金)は平成12年度のピーク時に示した3184億円から年々減少し、平成29年11月に市が発表した時点では、残高が1982億円まで減少しています。
マクロ経済がかんばしくなかったこの17年の間に市債残高を約38%減少させたことは、市の財政政策が優秀であったことを示していると言っても良いでしょう。
なお八王子市では、市債の発行によって得られた資金を、主に小中学校の校舎建設、都市計画事業などに利用しています。子供を含めた市民生活の向上を目指した市の借金なので、その政策は広く市民にも受け入れられているようです。
加えて八王子市では、基金(市の預金残高)の状況も著しく向上しています。平成17年度で93億円程度だった基金は、平成27年度で235円まで増大。かつてに比べ、市の懐具合はだいぶ暖かくなってきたようです。
これら八王子市の財政の現状に鑑みるに、確かに目先数年は市税の税収が厳しい状況とは言え、長い目で見れば間違いなく市の財政は上向きに推移していることが分かります。
ラスパイレス指数も健全化してきた
地方自治体の財政の健全性を評価する一つの指標に、ラスパイレス指数というものがあります。
ラスパイレス指数とは
国家公務員と地方公務員との格差を評価するための指数。国家公務員を100と仮定し、同じ仕事をしている地方公務員の給与水準を指数で表したものです。
本来であればラスパイレス指数が100であることが望ましいのですが、中には100を大きく超える自治体や、逆に100を大きく下回る自治体もあります。
平成13年度、八王子市のラスパイレス指数は105。政令指定都市を除いた全市区町村の中で8番目に高い水準を示していました。簡単に言えば「八王子市の職員は給与をもらい過ぎ」ということでした。
その後、市職員の給与引き下げ政策を断続的に続け、平成27年度にはラスパイレス指数が97.8まで低下。都内で最もラスパイレス指数が低い市となりました。
これら職員の給与政策に伴い、予算に対する人件費率も低下しています。平成17年度における人件費率は歳出全体に対して20.3%でしたが、平成29年度におけるそれは14.7%です。著しい低下率と考えて良いでしょう。